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zoom RSS 「核融合炉の誘致は危険で無駄」 小柴昌俊氏(ノーベル物理学賞受賞)の朝日新聞への投稿

<<   作成日時 : 2013/02/27 12:19   >>

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 「核融合炉の誘致は危険で無駄」という投稿が朝日新聞の2001年1月18日の論壇に掲載されました。投稿者はノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏(東京大学名誉教授)です。

 小柴氏が取り上げているのは国際熱核融合実験炉(ITER)で、重水素実験を実施したいとしている核融合科学研究所のトカマク型とは異なりますが、指摘されている問題は共通しています。

      
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「核融合炉の誘致は危険で無駄」

小柴 昌俊  東京大学名誉教授(素粒子物理学)

  新年度予算案に国際熱核融合実験炉(ITER=イーター)の立地予備調査費一億円が盛り込まれた。
実際に造るとなれば、建設費だけで五千億円はかかるという巨大計画である。あまりにお金がかかるので、国際協力で造ろうとレーガン、ゴルバチョフ米ソ首脳が合意したのが1985年だった。以後、米ソに日欧も加わった四極が分担してエ学実験と設計を進めてきたが、米国は98年にこの計画から撤退した。

それでも残る三極で設計を進め、一応の図面は引けたらしい。原子力委委員会に設けられたイータ一計画懇談会(吉
川弘之座長)は、日本誘致の方針を打ち出したとも聞く。

 核融合には、「二十一世紀の夢のエネルギー源」といった形容詞がつくことが多い。実用可能になるまで今後長期にわたる研究開発が必要だが、もし実現すれば、核分裂反応からエネルギーを取り出す普通の原子力発電と比べ安全対策が容易で放射性廃棄物も格段に少ないといわれている。

 しかし、物理学を学んできた筆者から見ると、核融合発電には致命的ともいえる欠陥がある。この欠陥が国民に十分に知らされないまま、誘致の方向が決まろうとしていることに強い憤りを感じる。
重水素と三重水素を融合させようというのがイータ一計画だが、そのとき高速中性子が大量に出る。これら高速中性子は減速されないまま真空容器の壁を直撃する。この際起こる壁の放射線損傷は、われわれの経験したことのない強烈なものになることは疑いない。
普通の原発であれば、飛び出た中性子は周りにある減速剤によって減速されるから、こうした問題は起こらない。

 かつて、イータ一計画関係者に、壁の放射線損傷をどうするのか尋ねたことがある、すると、6ヵ月で取り換えられるように壁も設計されているという返事が返ってきた。それなら、これによる稼働率の大幅な低下、コスト上昇はどうするのか、それより何よりそんなに大量に出る放射性廃棄物をどう処理するのか問いただしたが、ついに納得のいく返事を得られなかった。

 この計画の最初の主唱者であった米国が、この十年近くの経済の好況にもかかわらず、いちはやく撤退してしまった理由はこの辺にあったのではなかろうか。

 新しいエネルギー源を核融合に求めようというなら、壁を損傷する高遠中性子が出ない別の反応を取り上げるべき
だろう。例えば、ヘリウム3と重水素、あるいは重水素と水素二個の三体反応などがありうる。

 これらの実現には更に高い温度と密度を必要とするから、発想を大きく転換してかからなければならないだろう。どちらにしても、イーターをいま造ることは単なる税金の無駄遣いにしかならないのではないか。

 国民のお金を使うのに、消費型と投資型とがある。投資型がすべて無駄遣いであるというつもりはない。将来に向けて必要な投資は、しなければならない。ただ、巨額になることが多いのだから、その計画の弱点も含めて国民に知らしめてから判断を仰ぐべきだと思う。
 
 筆者は、ニュートリノと呼ばれる素粒子の性質を調べるという、何ら現世的見返りのない研究をしてきた。そのために岐阜県神岡鉱山の地下に実験装置を造り、百数十億円もの税金を支出してもらった。そんなお前が何を生意気なことを言うかといわれる向きもあるかもしれない。

 これに関しては、現役時代、毎年二人くらい研究室に入ってくる大学院学生に対して「おれたちはな、国民の血税をもらって白分たちの夢を追わせて頂いているんだぞ。かりそめにも無駄をしてはならないぞ」と繰り返し言い続けたことに免じてお許しをお願いたい。 =投稿


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